【Q】こんにちは。
いつも、物事を白か黒かではなく、
いろいろな角度から見せてくださる
川畑先生のお話に、
気づかされることがたくさんあります。
今日は、自分の「休み方」について
相談させてください。
私は64歳、現在は週3日、
事務の仕事をしています。
若い頃から体は丈夫な方で、
これまで大きな病気もなく、
多少疲れていても一晩寝れば
また元気になる、という生活を
ずっと送ってきました。
ところが最近、以前より疲れが残る
ようになったと感じることがあります。
先日も、仕事が休みの日に
朝から家の片づけをしていました。
「今日は時間があるから」と思い、
気になっていた押し入れの整理を始めたら、
つい夢中になってしまい、
気がつけば夕方になっていました。
翌日は、特に具合が悪いわけではないのに
朝から体が重く、何をするのも億劫でした。
そんな自分に対しても、
「昨日ちょっと動きすぎただけ」
「これくらいで休んでいてはいけない」
と思ってしまいます。
実は、こういうことが最近増えています。
友人から食事や買い物に誘われれば、
多少疲れていても出かけます。
町内の行事なども、自分にできること
ならなるべく参加しようと思います。
もちろん、誰かに無理やりやらされて
いるわけではありません。
自分で「まだできる」と思って
動いているのです。
けれど、以前のようには
体がついてこなくなっているのも、
薄々感じています。
それでも、「まだ64歳なのに」
「もっと年上でも元気に活動している人
はたくさんいる」と思うと、
疲れたから休む、ということが
何だか怠けているように
感じてしまうのです。
本当に具合が悪ければ休みます。
熱がある、寝込むほど体調が悪い、
そんな状態なら仕方がないと思えます。
でも、「何となく疲れた」
「今日は家でゆっくりしたい」という程度
では、休む理由にならないような気がします。
先日、女友達と一泊旅行に行った時も、
せっかく来たのだからと、
朝から観光地をいくつも回りました。
友人から「少しカフェで休まない?」
と言われても、「まだ大丈夫」と答えて
また歩き始めました。
楽しかったのは確かです。
でも、帰宅した翌日は何もする気が起きず、
ほとんど横になって過ごしました。
それでも私は、「せっかく旅行に行ったの
だから、元を取るくらい楽しまないと」
などと考えてしまいます。
最近になって、もしかしたら私は、
「元気でいられるうちは、できることを
全部やらなければ」と思っているのでは
ないかと感じるようになりました。
年齢を重ねて、以前と同じようには
できなくなっていることを、
どこかで認めたくないのかもしれません。
でも、この先も「まだ大丈夫」と
言いながら無理を重ねていたら、
本当に体を壊してしまうのではないか
と不安にもなります。
元気なうちに活動することと、
無理をしすぎることの境目が、
自分ではよく分かりません。
これから先も、今までと同じように
「できるからやる」と考えて
動き続けていていいのでしょうか。
年齢とともに変わっていく自分と、
どのように付き合っていけばよいのか、
アドバイスいただければ幸いです。
【マカロン・60代・女性・パート】
【A】マカロンさん、
ご相談ありがとうございます。
「まだできる」「まだ大丈夫」と思える
ことは、ありがたいことですね。
年齢を重ねても好奇心を失わず、
人とのつながりや地域の活動を
大切にされているマカロンさんの姿勢は、
とても素敵だと思います。
一方で、マカロンさんの中には、
「本当に具合が悪いなら休んでよい」
「何となく疲れた程度では
休んではいけない」
という、
はっきりした線引きがあるようです。
熱がある、寝込むほどつらい、
どうしても動けない――そこまでいって、
ようやく自分に休む許可を出しているの
ですね。
でも、疲労は必ずしも、はっきりした
不調として現れるわけではありません。
「今日は少し体が重い」
「何となく億劫だ」
「家でゆっくりしたい」
そんな感覚も、「今日はこのくらいに
しておきましょう」という
体からの穏やかな知らせです。
その小さな声を聞かずにいると、
体は翌日のだるさや強い疲労という、
もう少し大きな声で
知らせなければならなくなります。
ですから、「何となく疲れた」は、
十分に休む理由になるのです。
これまで体が丈夫で、一晩眠れば
元気になれたマカロンさんだからこそ、
「疲れは一晩で回復するもの」という
感覚が身についているのでしょう。
けれど、年齢とともに体のリズムや
回復に必要な時間が変わるのは、
ごく自然なことです。
それは「弱くなった」「怠けるようになった」
ということではありません。
今の体から届く新しい情報なのです。
大切なのは、
「今もできるかどうか」だけではなく、
「したあとに、どのくらいの回復が必要
になるか」まで含めて考えることです。
できることと、しても消耗しないことは、
必ずしも同じではありません。
押し入れの整理も、旅行先での観光も、
その最中は夢中になれますし、
実際に楽しくもあります。
けれど、翌日に何もする気が起きず
ほとんど横になって過ごすのであれば、
体はきちんと
「昨日は少し使いすぎましたよ」と
教えてくれているのでしょう。
マカロンさんご自身も書かれているように、
その背景には、「以前と同じようには
できなくなっている自分を認めたくない」
という思いもあるのかもしれませんね。
自分の変化を受け入れることは、
ときに、これまでの自分を失うように
感じられるものです。
また、周囲にもっと年上で元気に
活動している人がいれば、
「私もまだ頑張らなければ」と
思うかもしれません。
けれども、同じ年齢でも、
体質や生活環境、仕事、睡眠、
回復のペースはそれぞれ違います。
外から元気そうに見える人が、
家ではどのくらい休んでいるかも
分かりません。
比べるなら、
他人ではなく「今日の自分」です。
そして、休むことは
「できなくなったと認めること」でも、
活動を諦めることでもありません。
むしろ、これから先も好きなことを
続けるためのメンテナンスです。
車も完全に故障してから修理するだけ
では、長く安全に乗り続けることは
できません。
故障する前に点検し、燃料を補い、
ときには運転を休むからこそ、
遠くまで走り続けられます。
年月を重ねれば、以前よりこまめな
メンテナンスが必要になるかもしれません。
それでも、丁寧に手入れをすることで、
長く快適に走り続けることができます。
人の体も同じです。
「まだ動けるから休まない」のではなく、
「これからも動きたいから、動けるうちに
休む」と考えてみてはいかがでしょうか。
また、これからは
「どれだけたくさんできたか」という量
だけでなく、「どれだけ心地よく味わえたか」
という質にも目を向けてみてください。
旅行で「元を取る」とは、決して観光地を
一つでも多く回ることだけではありません。
カフェでひと休みし、その土地の空気を
感じながら、友人とゆっくり語り合うことも、
旅の豊かな一場面です。
「詰め込む」ことから「味わう」ことへと
価値の軸を少し移してみると、
休憩は活動の中断ではなく、
楽しみの一部になります。
もしかしたらご友人は、
観光地を巡ることと同じくらい、
そんなゆったりとした旅情も
味わいたかったのかもしれませんね。
今後マカロンさんができることとして、
日常でも次のようなことを
試してみてはいかがでしょうか。
まず、「まだできる」のか、
それとも「まだやりたい」のかを
区別してみることです。
その際には、頭の声だけでなく、
身体の声にもきちんと耳を傾けてください。
そして、「まだできる」と思うところでも、
八分目で終えてみることです。
残りの二割は、明日の自分のための余力
として残しておいてあげましょう。
押し入れの整理なら
一日で終わらせようとせず、
身体の声にも耳を傾けながら
「今日は午前中だけ」「今日はこの一段だけ」
と決めます。
まだ少しできる余力を残して終わることを、
物足りなさではなく、明日の自分への
思いやりと考えてみましょう。
何かに誘われたときも、
「今、行けるか」だけではなく、
「今、行きたいのか」
「行ったあとの明日の私は、どうなりそうか」
と尋ねてみてください。
活動そのものに使う時間だけでなく、
そこから回復する時間までが一つの予定です。
そして、休息を予定の空白としてではなく、
最初から大切な用事として
確保してみてください。
予定が入らなかったから休むのではなく、
「この時間は何もしない」
「この午後は体を整える」と
先に決めておくのです。
休息は、何もしなかった時間ではありません。
これからの自分のために、
心と体を回復させた時間です。
体が重いと感じたときは、
「こんなことで休んではいけない」
と叱る代わりに、
「昨日もよく動いてくれたね」
「教えてくれてありがとう」
「今日は少しゆっくりしよう」
と、長年働いてくれている体を
ねぎらってみてください。
年齢とともに変化する自分を受け入れる
ことは、諦めでも敗北でもありません。
その時々の自分に合うように、
暮らし方を更新していくことです。
それは、自分の身体に対する敬意であり、
自分を大切にする智慧です。
ぜひ、「できるからやる」から、
「大切なことを、心地よく続けられる方法
でやる」へシフトしてみてください。
なお、十分に休んでも疲れが取れない状態
が続く、息切れや動悸、めまい、強い眠気、
食欲や体重の変化、気分の落ち込みなどが
ある場合は、
単に年齢のせいと決めつけず、
一度医療機関で相談してくださいね。
マカロンさんが、これからも好きなことを
長く楽しむために、「休むこと」も
前向きな予定の一つに加えられますように。
ー川畑のぶこ
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