shutterstock_730885267

【Q】はじめまして。
「片づけない夫」のことで
相談させてください。

夫が5年間の単身赴任を終えて
戻ってきました。

もともと買い物が好きな人で、
赴任前の同居時代も夫の持ち物が
リビングや寝室にあふれていました。

赴任時にだいぶ整理したものの、
この5年の間に向こうでまた洋服や雑貨、
健康器具などをたくさん買い込み、
何も捨てずに全部持ち帰ってきました。

最初の1〜2か月は仕方ないと思い、
口を出さずに見守っていましたが、
半年以上たった今もダンボールが
廊下や寝室に積まれたままです。

寒くなってきたので衣替えのついでに
片づけるかと思いきや、
箱から1枚ずつ引っ張り出して着ています。

「荷物どうする? 
手伝えることがあれば一緒にやるよ」
と声をかけても、

「自分でやるから、開けないで」
と言うだけで、少しも進みません。

そんな状況なのに、休日はソファでテレビ。

夫専用の部屋があるわけではないので、
リビングや寝室、納戸にまで荷物が
分散していて、家の中が落ち着きません。

私としては、夫の赴任中に
コツコツ片づけて整えてきた空間が
また乱れていくのを見るのがつらく、
ついイライラしてしまいます。

とはいえ、あまり強く言えば
喧嘩になるのもわかっています。

夫は何を思ってモノを手放せないのか、
片づけない(片づけられない?)のか、
私はどんな声がけをして、
どう関わるのがよいのでしょうか。

アドバイスをいただけたら助かります。

【まーこ・50代・女性・専業主婦・埼玉県】

【A】まーこさん、
ご相談ありがとうございます。

ご相談を読んで、まず強く感じたのは、
まーこさんが、この5年間、
お一人で家を整え、生活空間を丁寧に
守ってこられたのだなぁということ。

そこに夫さんの大量の荷物が
一気に戻ってきて、
生活リズムも空間感覚も
乱されてしまったのですね。

自分のペースで整えてきた場所が
荒れていくのを見る切なさは
とても自然な反応ですし、
イライラするのは悪いことではなく、
それほど家を大事にしてきた証拠かと
思います。

一方で、ご主人の側にも
片づけられない理由がありそうです。

まーこさんの夫が
それらのモノを手放せない背景には、
いくつかの心理が働いているように見えます。

単身赴任の5年間で自分を支えるモノが
当然増えたことと思いますが、
これらのモノは、多くの男性にとって
「がんばった証」や「心の支え」として
心理的な機能を果たしている可能性が
あります。

服・雑貨・健康器具…
これらのモノも、もしかしたら
孤独や不安を解消するための
セルフケアの代用品である可能性もあります。

帰宅後にそれらを一気に手放すのは
まるで5年間の自分の歴史(=生きた証)
を否定するようでつらいという
心理が働くことも多いのです。

箱を開けると、赴任中の思い出、
孤独だったあのとき、
やりたかったけどできなかったこと、
老いへの不安…等々があふれ出し、

それに向き合うのが億劫になって、
箱を開けること自体に無意識な抵抗が
はたらいている場合もあります。

また、片づけ=管理能力というイメージから、
はたして自分が有能か無能か
能力を試されているように感じて、
負担となっているかもしれません。

それがきちんとできないことに
「ダメ出し」されるような気がして、
避けているかもしれません。

「自分でやるから開けないで」というのは
過剰な防衛からかもしれませんね。

では、どのように
はたらきかけたらよいのでしょうか?

まーこさんにはまず、
夫の持っている「モノ」や「空間」ではなく、
彼の抱いている「気持ち」に寄り添う姿勢
を育んでいただきたいと思います。

たとえば、
「早く片づけてよ」「どうするの?」
と言う代わりに、

「あなたのペースでいいのだけれど、
 私はこの家が心落ち着く場所だと嬉しいと
 思っているの。だから一緒に気持ちよく
 暮らせる方法を一緒に考えられたら
 助かるな」

などと伝えてみるのは効果的かもしれません。

「片づけろ」
という指示的なメッセージではなく、
「私はこう感じている」という“I”メッセージ
に変えると、相手の防衛が下がります。

・責めない
・人格を否定しない
・感情の爆発で伝えない

というポイントを大事にしてください。

また、片づけのプロセスも、
一気に全部片づけることを目指すのではなく、
小さく限定された具体的な対象から始める
のは効果的です。

人はあいまいなタスクには手がつきません。

たとえば、

「この段ボール1箱だけ見直す日を
 決めようか?」

「休日の午前中だけ
 15分一緒にやってみようか?」

「残す/捨てるじゃなく、
 分類だけしてみようか?」

片づけではなく、分類とすることで、
ハードルが一気に下がり、
その流れから自然と
片づけに進むことがあります。

また、夫の気持ちに寄り添うのに、
捨てる前に一緒に思い出したり
振り返る時間をつくることも有効です。

ご主人の荷物には、
単身赴任の5年間の物語があります。

箱を開けて、
すぐに捨てようとすると心が拒否します。

まずは、
「これは、赴任のどんな時期のもの?」
「これ、どんな気持ちで買ったの?」と
優しくモノの背景にある物語に耳を傾け、
受け取るだけでも、
相手は手放しやすくなります。

モノは「気持ちの結晶」なので、
言語化されると役目を終えやすいのです。

スペースの使い方に関しては、
二人で話し合いながら、
本人の領域と共有スペースを
明確に分けることも大事です。

たとえば、ご主人専用の小さな棚や
スペースをまず1か所だけ確保して、
「ここはあなたの自由ゾーン」
とするのも非常に有効です。

その上で、

・共有スペースに置けるのは○個まで
・溢れたら自由ゾーンに戻す
・自由ゾーンに入らないものは相談する

などといったルールを
二人で決めてみてください。

「奪われた」という感覚がなくなると、
人は片づけに協力しやすくなります。

まーこさんが
半年以上見守ってこられたことは、
十分すぎるほどの忍耐です。

これ以上ひとり我慢を続ける必要は
ありません。

以上のことを実践しながら、
「私はこの家を大切にしたい」という
自分の価値観を丁寧に主張してください。

片づけの問題は、
単なるモノの問題ではなく、
人生の変化に適応するためのプロセスです。

ご主人は、単身赴任を終え、
「夫」としての役割に戻る移行期の
まっただ中で、荷物が片づかないのは、
心がまだ家に着地しきれていないサイン
でもあります。

だからこそ、
まーこさんの温かい寄り添いと言葉が、
とても力になります。

どうかまーこさん自身の心地よさも
同じだけ大切にしながら、
少しずつ二人の新しい暮らしを
整えていけますように。

応援しています!

ー川畑のぶこ

       
        
ーーー

 
★あなたが今抱えている『悩み』をお聞かせください。
 毎週2件をピックアップし、
 月曜日(YouTube版)・水曜日(テキスト版)に
 配信のメルマガで、
 川畑のぶこが直接お答えします。

 ご相談はこちらから