【Q】医療系の営業事務として働いています。
失敗を隠したり、他人のせいにしたりする
年下男性で営業職の同期社員に
辟易しています。
彼は口が達者で、上司も先輩も
注意すると倍以上で返ってくるため、
注意を諦めている状態です。
上司、先輩に相談した際、
実際にそう伝えられました。
失敗を隠したり、
事務の私のせいにするため、
その弁明に時間を取られたり、
揚げ足を取られたりしないように
神経を使います。
現在は、指示内容の証拠が残るよう、
会話はほとんどせず
チャットで指示を出しています。
話さなければならない場面や指示を出す時に、
恩を仇で返されるとわかっているのに
親切にしてしまったり、
過緊張してしまったりする自分が嫌です。
いい人と見られたい欲から来ているのかな
と思います。
彼は変わらないとわかっているので、
自分の心構えを変えることが
必要だと思いますが、
どういう心がけや行動が必要でしょうか?
【アヤ・20代・女性・営業事務】
【A】アヤさんの周囲との調和を
大切にできる優しいお人柄と、
誰に対しても丁寧に誠実に対応しよう
という努力が伝わってきます。
これは、
アヤさんの素晴らしい資質だと思います。
同時に、アヤさんの心のエネルギーは
身体のエネルギーと同様に有限です。
適切につかわないと
いずれ枯渇してしまいます。
ですので、この貴重なエネルギーは、
それを真摯に受け取るに相応しい
大切な人たちのために取っておくことを
お勧めします。
己の失敗を認めず、それどころか
周囲やアヤさんのせいにしてしまう同僚が
近くにいるのは、本当にエネルギーを
消耗することだと思います。
その同僚は、上司や先輩でさえ
注意すると倍以上になって返ってくるので
指導を諦めている状況とのことですから、
アヤさんの努力で変わるということは
ほぼないと考えて良いでしょう。
このような人とは適度な距離感を取って
接することが重要です。
その中で、アヤさんが、口頭ではなく
チャットを活用し、指示や経緯を記録に残す
という工夫をされていることは、
とても現実的で賢明なリスク管理であり、
すばらしいバウンダリー(境界線)の
引き方です。
こちらは良策として継続してみてください。
同時にアヤさんの内面の課題にも
取り組んでみてください。
本当にアヤさんを苦しめているのは、
その同僚の存在そのものよりも、
「こんな相手だと分かっているのに、
親切にしてしまう自分」だということにも、
アヤさんはすでにお気づきなのですね。
ご自身で「いい人と思われたい」気持ちが
あることを分析されていますが、
まず、私たちは社会的な生き物ですから、
相手との対立を避けたい、
円滑に仕事を進めたい、
好意的に思われたいと願うのは
当然のことですし、
多くの場合そのような姿勢が
人間関係に良好に作用するでしょう。
ただ、度が過ぎると
それはネガティブに作用してしまいます。
アヤさんの
「社会人として誠実でありたい」
「礼儀は尽くしたい」
「相手が誰でも丁寧に接したい」
という美しい姿勢が、
「どんな相手にも
必要以上に配慮しなければならない」
と変化すると、
自分自身を苦しめることになります。
境界線のない優しさは結果的に
自己犠牲につながってしまうのです。
その親切心をぜひ、「丁寧な事務処理」
に置き換えてみてください。
アヤさんがご自分の行動の目的を
明確にすることは、
心を安定させる助けになります。
おそらく、アヤさんの注意はこれまで
良好な人間関係を築くことに注がれていた
ことと思いますが、これからは、
業務を適切に遂行することに注いでみます。
親切心ではなく、丁寧な事務処理です。
挨拶はきちんとしますし、
必要な連絡もします。
また、礼儀も尽くします。
ただし、
それ以上の心理的な働きかけはしません。
ホテルの受付や銀行の窓口のように、
淡々と、しかし礼儀正しく業務を遂行する
イメージです。
相手の感情の責任までは負う必要はなく、
ビジネスマナーをもって接するだけで
十分です。
いったん「いい人」から離れてみて、
「健全な人」を目指してみてください。
「いい人」でいようとすると、
理不尽な相手にも必要以上に
尽くしてしまい消耗しますが、
この背景には、「誰からも好かれたい」
心理が隠れています。
ただ、「皆から好かれる」ことは
そもそも不可能です。
不毛なチャレンジをする代わりに、
自分の尊厳を守れる人になることを
目指してください。
これは毅然としたプロフェッショナルの
姿勢でもあります。
プロは、相手に応じて
使うエネルギーも適切に変えます。
たとえば、飛行機のサービスは、
ファースト、ビジネス、エコノミーと
クラスごとで変わりますね。
これに文句を言う人はいないでしょう。
これは客がそこにどのような価値を見出して
エネルギー(お金)を使うか、
に対応するサービスの差です。
アヤさんも、同僚がアヤさん(や周囲)に対して
どのような価値と、どのようなエネルギーを
もって接しているのかを振り返ったうえで、
相手が受け取るにふさわしい
心のエネルギーで接してみてください。
心のエネルギー配分を変えるだけで、
ぐんと楽になるはずです。
同時に、相手の立場も理解してみます
(同調する必要はありません)。
相手がまた責めてくる、
揚げ足を取ってくる、というときは、
「相手は自分の課題に直面しているのだな」
と自分の課題と相手の課題を
区別して考えてみます。
責任転嫁や言い訳、揚げ足を取るなどは
多くの場合、相手の未熟さや不安、
自信のなさから生まれる防衛反応です。
アヤさんの価値や能力とは、
何の関係もありません。
職場には残念ながら、一定数、
責任転嫁や自己防衛を繰り返す人がいます。
その人の課題を、
私たちが背負う必要はありません。
もし理不尽なことを言われたら、心の中で
「ああ、また彼の課題が始まったな」と
一歩引いて眺められるようになると、
心はずいぶん楽になります。
心理学では、このような俯瞰した状態で
物事を観察することをメタ認知と呼びます。
感情の中に飲み込まれるのではなく、
一歩外から観察する姿勢です。
対面の必要があるときも、
漫然と相手に合わせて話をするのではなく、
時間を短めにする、「予定があるので
5分ほどでお願いします」など、
時間の境界線を引いて、
相手が土足であなたの大切な時間や心に
入り込めないようにすることも大切です。
そうすることで、相手の反応に
心が振り回されにくくなります。
相手の言いがかりに弁明したくなったときも、
事実だけを示します。
「それはあなたのせいだ」と言われても、
感情的に反論したり、弁明したりせず、
チャットという証拠をもって
「○月○日のチャットのとおりです」
「指示内容はこちらになります」と、
事実だけを淡々と提示すれば十分です。
事実は議論するものではなく、
単に確認することです。
ですので、
弁明よりも、説明を心がけてください。
「冷たいと思われるかも」
「嫌な人だと思われるかも」
という不安が出てきたら、
ぜひ思い出していただきたいのは、
相手の評価は、
その人個人の都合による評価であって、
私という人間の真の評価ではない
ということです。
とくに、自己中心的な人や依存的な人は、
境界線を引く人を「冷たい」とか
「いじわる」と感じるかもしれませんが、
それは相手の自己都合による評価です。
私たちは、
万人から100点をもらう必要はありません。
なにより、アヤさんご自身が
「私は誠実だった」
「私は礼儀を尽くした」
「私は自分の仕事をきちんと果たした」
と、胸を張ってご自身に言えることが、
ずっと大切です。
このようにご自身を大切に守る姿勢が
育まれるほどに、相手に振り回される
時間もエネルギーも少しずつ減り、
その分、本当に大切な仕事や人間関係に
心を注げるようになるでしょう。
ー川畑のぶこ
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