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Q. 川畑先生、いつもメルマガ拝見し
温かいコメントに癒されています。

今、私は仕事を辞め専業主婦をしております。
以前は透析クリニックで看護師として働いておりました。

長期療養で治る見込みのない患者さんと
ずっと付き合っていました。
長い方では20年近くご縁のある方もいました。

私なりに誠意をもってやってきたと自負しています。

患者さんの我儘も仕方がないと
多少拒否をされたとしても、受け入れてきました。

ある時、どうしても受け入れがたいことがありました。
「お前ウザイ、担当変えて、二度と俺のところにくるな。」と
怒鳴られたことがありました。

よく攻撃的なモノ言いをする方ではあったのですが、
そこまで拒否をされることはなかったのでとても驚きました。

それからというもの、その方の無視する態度は続き、
上司に相談しても
暴力は振るわれていないのだから対処できない。
その時は退職を決めていた私に対して、
上司は取り合う態度は見受けることはできませんでした。

夫に相談したとしても、
「その人の琴線に触れることを私が言ったのだろう」というだけで
親身に聞いてはくれませんでした。

そんなことで夫との関係も距離が離れていたと思います。

同じ想いを抱えた同僚は親身に相談に乗ってくれたことは
今でも感謝しています。

今でも、そのことを思い出すと、怒り、悲しみ、苦しみが出てきます。
仕事をしたい、でも怖いという思いが手放せずにいます。

この気持ちを手放すためには、どうすればよいのでしょうか。

【eri・50代・女性・専業主婦(看護師)】

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A:FROM 川畑のぶこ

看護臨床の現場でのパラドックスのひとつは、
eriさんのように真摯に患者さんと向き合う看護師であればあるほど、
患者さんの一つひとつの反応に丁寧に向き合うことで消耗してしまい、
精神的に辛くなって臨床を去ってしまうこともあるということだと思います。

命や健康を預かる場であるが故に、当然のことながら、
日々患者さんと真剣に向き合うことは必要とされるのですが、
真剣を通り越して深刻に捉えてしまうと、
心身ともにもたなくなってしまうことがあります。

かといって、鈍感力高く、
患者のクレームをいちいち気にしない医療者ばかりが増えてしまっても、
看護の質の低下という問題が起きてしまいます。

この辺のバランスは、患者さんからの暴言や無視などで、
精神的な攻撃(や暴力)を受けている場にずっと身を置き続けるのは、
いうまでもなく不健全で、対処が必要です。

その対処法として場を去るというのもひとつですが、
別な視点を育み対処することも可能です。

今回のeriさんのような出来事も、視点を少し変えてみると、
受け止め方や感じ方は変わってくるかもしれません。

もし、この患者さんのいる現場が、腎内科ではなく、
精神科や認知症病棟であったならどうでしょうか?

暴力的な言動は病理やパーソナリティーの障害などによるもので、
医療者の多くは、真剣に対応しつつも、
暴言の内容をパーソナルなこととして深刻に悩み
引きずることは少ないのではないでしょうか。

透析患者さんの中には、腎疾患のみならず、
精神や神経系の問題を抱えている患者さんもおり、
他人への攻撃的な態度など、
病的なふるまいをする人もいます。

もし、eriさんが20年働いている現場で、
そのような態度を取られることがこの患者さんしかなく、身に覚えが無い、
同僚と確認してもeriさんに対する改善の指摘が無いのであれば、
これはeriさんの問題ではなく、
患者さん側の問題ということが考えられます。

患者さんの病理や攻撃的なパーソナリティがそうさせているのであれば、
eriさんがそのことをパーソナルに受け止めて悩むのは的外れであること
をお分かりいただけると思います。

いじめっ子は、憂さ晴らしをするのに、いじめやすい子
(反発せず真剣に受け止めて悩みやすいなど、
いじめっ子が意図する反応がある人)
をターゲットにすることを想像してみると
理解が深まるかもしれません。

いじめは、いじめられる側ではなく、
いじめる側の問題であることを考えてみます。

いじめられっ子がいじめっ子の態度を、自分のどこが悪いのかと、
自己否定的に深刻に受け止めてしまうことで、
さらにいじめっこの態度が正当化されるという悪循環が
おきてしまいます。

また、いじめっこ自身も自分自身の未解決な問題で苦しんでいて、
その苦しみに気づいていません。

誰かをターゲットに憂さ晴らしし、問題を誰かのせいにしている間は、
自分の大きな課題に取り組まなくていいので都合が良いのです。

未解決な問題を抱えている患者さんの中には、
そんないじめっこのような未熟な精神状態におかれていることも多く、
そのようなダイナミズムを
俯瞰的な視点で理解しておくことは大切です。

eriさんはサイコネフロロジーというのはご存知でしょうか?

腎疾患、腎不全、腎移植患者およびその家族の
精神・心理・社会的問題や、それらの医療現場に携わる
スタッフの精神衛生についての研究分野で
1990年に学会が設立されています。

これはネフロロジーの領域に留まることではありませんが、
精神科と各診療科の連携が構築されることで、
eriさんが体験したような問題に
より建設的に対処できることが可能となります。

このような連携はリエゾンと呼ばれます。

リエゾンが機能することで、
患者の精神・心理・社会面も専門的にケアされ、
攻撃のターゲットとなる医療者が個別に悩まずにすむ、
よりシステマティックに効果的に問題を解決していくことが
可能になることと思います。

医療者が、患者さんの状態を包括的に把握することで、
ネガティブな言動に巻き込まれず
(被害者意識にさいなまれることなく)、
冷静で客観的な目で患者さんを見守り、
慈しみの心で接することができるようになるでしょうし、
この姿勢は、自分を守ることにも繋がることと思います。

上司やご主人も、もしかしたら
eriさんがそこまで悩むことではなく、
ものごとを曲解してしまう患者さんの問題なので、
気にする必要はないと思っている可能性もありますね。

ご主人の言葉も、eriさんの悪意ない言動が、
その患者さんにとっては曲解と妄想のトリガーとなったという
文脈だった可能性もあるのではないでしょうか。

また、もしかしたらeriさんは、
ご主人に解決策を求めていたのではなく、
ただひたすら共感してほしかったのかもしれませんね。

そうであれば、ご主人に
「私は状況分析や解決法ではなく、
ただ、大変だったねとあなたに共感してほしい」
と伝えてみてはいかがでしょうか。

そのことで、ご主人はeriさんとの関係において
「共感という解決策」を見出すかもしれません。

eriさん自身のニーズを大切な相手に伝えることも怠らずに、
ご自身を大切にしてあげてください。

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