【Q】若い頃から手芸や裁縫が好きで、
時間があるとよく何かを作っていました。
結婚や子育てで忙しくなってからは
まとまった時間がなかなか取れず、
「いつか時間ができたらまたやろう」
と思いながら、今に至ります。
今は子育てもほぼ終わり、
以前より時間のやりくりはしやすく
なったはずなのに、
仕事から帰ると疲れてしまって
ついダラダラ過ごしてしまいます。
実際にはほとんど何も作っていません。
それなのに、
手芸店に行くと不思議なもので、
「これも作れそう」「今度こそやるかも」
と気持ちばかりが盛り上がり、
布や材料をあれこれ買い込んでしまいます。
ところが家に帰ると、
そのやる気はどこへやら。
材料は押し入れや納戸にしまわれ、
数日もすると買ったことすら
忘れてしまいます。
そんな材料のあれこれを
たまに引っ張り出して眺めて、
完成した姿を妄想する時間は楽しいのですが、
ミシンを出して本格的に作り始める
ところまでは至りません。
使わない材料が増えていくことに、
強い罪悪感があるわけではありませんが、
押し入れや納戸を開けるたびに
「また増えてるな」と苦笑いしてしまいます。
先日も、家族から「使わないのに、
また買ってきたの?」と指摘され、
図星で返す言葉がありませんでした(汗)。
作る時間がないのは分かってるんですけどね、
それでも買う瞬間が楽しくて、
つい繰り返してしまいます。
このまま増やし続けるのも違う気がするし、
かといって今すぐに、
無理に捨てるのも抵抗があります。
とりあえずもう買わないようにする?
徐々に減らす?
自分で考えるだけでは
何も解決しなさそうで、、、
川畑さんなら何かアドバイスをくださる
のではないかと思い、
こちらに送らせてもらいました。
意志が弱いだけでしょうかね。
しょうもない相談ですみません。。。
【りんごあめ・50代・女性・
パート勤務・宮城県】
【A】りんごあめさん、
ご相談ありがとうございます。
私も過去に実家の断捨離をした際、
母と妹の裁縫(手芸)関係のモノたちで
埋め尽くされた棚によって、
2階のトイレのドアをフルに開けられ
なかったという経験があります。
私が2人に許可をとって断捨離をした結果、
棚ごと捨てて、トイレのドアは無事
開けられるようになりましたが。
何かを創作するプロセスは心がときめくのと、
手芸用品はブランド品とはちがい
お手軽に買えてしまいますから、
気がつけばこんなに!?なんてことは、
ものづくりLoverあるあるだと思います。
まず、りんごあめさんにお伝えしたいのは、
買ってばかりで作らないのは、
決してりんごあめさんの意志の弱さに
よるものではないということです。
とても人間らしくて、むしろ感性の豊かさ
がある方に多いことだと感じます。
また、覚えておいていただきたいのは、
りんごあめさんは決してそれらのものを
無駄遣いはしていないということです。
というのは、りんごあめさんは、
モノそのものを入手しているようでいて、
実はモノ自体を持つことが目的ではなく
「創造の可能性=心のときめき」を
手に入れているのです。
りんごあめさんが手芸店で
材料を手に取るとき、
実用的な布やパーツそのものより、
これにより何かを生み出せるという期待感や
好きな時間を楽しんでいる未来の私などを
脳内で想像して、
ご自身の可能性や未来の物語を
味わっていることと思います。
この想像のプロセス自体に
大きな価値があるのです。
脳は実際に起きていなくても、
そのイメージをしているときに
似たような活動をします。
好きな人のことをイメージしているとき、
あるいは嫌いな人をイメージしているとき、
実際にその相手が目の前にいなくても、
あたかもいるような感覚が訪れるのでは
ないでしょうか。
りんごあめさんご自身も、
材料を眺めて妄想する時間は楽しいと
書いていらっしゃいますから、
そうであれば、その時点ですでに
材料はしっかりお役目を果たしています。
最終形の実用的な形になってはいないかも
しれませんが、だからといって
無駄なわけでも、ダメな私でもないのです。
りんごあめさんは
過去に作成したものを手にしたとき、
今でもそれらを買って作成するまでの
ときめきは感じられますか?
あるいは、今手元にある材料を手にした
ときに、それを買ったときのワクワク感
はありますか?
それとも、とうに旬は過ぎていますか?
いまだにワクワクするなら
まだ生きた関係かもしれませんが、
もしすでに旬は過ぎて
罪悪感しか湧かないのなら、
「使ってあげられなくて申し訳ない」
という気持ちの代わりに、
「あのときの、クリエイティブでときめく
時間をありがとう!」と、感謝の気持ちに
変えて手放してあげてみてください。
形として残ることだけが
モノの果たす役割ではありません。
疲れている私に、実際に手を動かすまでは
いかなくとも、想像だけで喜ばせてくれる、
素晴らしいエネルギーチャージの時間が
確かに与えられたのですから。
仕事から帰ってダラダラしてしまう自分を
責める必要はなく、50代なら
長年の蓄積疲労もあるかもしれませんし、
脳や体が「今はアウトプット(制作)するより
インプット(休息・空想)が必要だよ」と
サインを出しているだけかもしれません。
ぜひ、「材料は作るためのもの」という
前提を手放して、
「眺めて楽しむもの」
「触って癒されるもの」
材料に触れる時間そのものの価値を
再確認してみてください。
「作る力」よりも「思い描く力」で
心を回復させている私なのだと。
これも立派なモノとの関わり方なのです。
それでもやはり作りたい気持ちが
あるのなら、優先順位を決め、
その中から今でも心ときめく作品に
材料を絞って作成にとりかかることを
おすすめします。
これまで作るところまで行かない理由には、
ある種の完璧主義が働いていないかも
振り返ってみてください。
たとえば、「作り始めるからには、
途中で止めることなく、失敗せず、
最後まで完全なものを作り切ること!」
などと、それを破ったところで誰も困らない、
無意識な自分との約束で
自分自身を苦しめているかもしれません。
また、買っていい枠を決めるのも大事です。
「もう買わない」という全か無か思考は
反動が来やすいですし、無理は続きません。
制限を設けて、例えば、
この箱に入る分まで、
この引き出し1段まで、
今ある量とおなじ分だけ、など
決めてみるのは有効です。
これで楽しみを奪わず、増えすぎも防げます。
「作らない前提」でひとつだけ
触ってみるのもおすすめです。
作業をする意図ではなく、
あくまでも接触の意図です。
ミシンを出さなくていいし、
完成させなくていいです。
これを許すと、不思議と
「もう少しやってみようかな」という
気持ちが自然に湧き起こることがあります。
「もし作りたくなってしまったら、
作っても構わない」と、あくまでも
オプションとして関わってみてください。
宝石をつけないけれども
ジュエリーボックスを眺めているだけで
満足している人は世の中たくさんいます。
これからもぜひ、
りんごあめさんにとっての宝石と
関わる時間を大切にしてください。
ー川畑のぶこ
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