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今日は、みなさまからのご相談への回答をお休みし、
川畑のぶこからのメッセージをお伝えします。

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A:FROM 川畑のぶこ

がんのカウンセリング現場では、
主治医には伝えられない患者さんの悩みを多く聞きます。

告知を受けて、頭の中が真っ白になり、そのあとは
ドクターの話に頷いてはいるけれど、なにも覚えていない…

次の診察時に、もういちど詳細を尋ねると
「前回伝えたでしょう」と不機嫌に対応をされ、
そのまま遠慮して引き下がってしまう…

治療の選択に悩み、カウンセリングや、食事療法、
鍼灸や漢方やサプリメントなど、保険治療外のとりくみを
しているけれども、ドクターには否定されそうで言えない…

データより私の目を見て、人として向き合い、
脆い私を励ましてもらいたいけれど、
忙しそうでそんな要求は到底できない…

仕事は続けたいけれど、職場に迷惑をかけてしまうので、
やめた方がよいと考えている…

心配をかけたくないので、周囲に病気のことは伝えたくないけれど、
隠し続けるのも疲れる…

ふとしたタイミングに意識していないのに涙がワーっと溢れ出し、
何が何だかわけがわからなくなってしまう…

そんな姿を見た家族も本当は泣きたいのに泣けない…

このように、ただでさえ病気のことで落ち込んでいるところへ、
次から次へとふりかかってくる課題に圧倒され、
ついには心が折れそうになる患者さんも少なくありません。

サイコオンコロジー(精神腫瘍学=がんと心に関する医学)が
提唱され久しいですが、患者さんの心のケアは
一見進んだように思えるものの、実際の医療現場は多忙を極め、
患者さんのメンタルケアまで丁寧に行き届いているかと問われれば、
まだまだ限られていると言わざるを得ないでしょう。

患者さんも、いったい、何を信じ、何を疑ったら良いのか、
ネット検索などしたなら、あまりにも情報が多くて翻弄されてしまいます。

こんなケースがありました。

50代男性のがん患者Aさんは、妻がネットや書籍から調べた情報で、
毎日の食事を玄米菜食に切り替えました。
そして、砂糖や塩などの調味料も抜きました。

それまでは食べることが大好きなAさんでしたが、
病気になってからは、徹底的な食事制限がされるようになりました。

そのうち、まるで草を食べさせられているうさぎになった気分だと、
元気なさげに訴えるようになります。

さらには、それまでお腹がすいていたのに、
食事が目の前に出されたとたんに、
食欲がなくなってしまうような状態に陥りました。

すると、みるみる体重は減り、体力も落ち、意欲も低下して、
やがて、なんのために生きているのかわからなくなってしまい、
抑うつ状態に陥ってしまいました。

こんな、切ないエピソードはめずらしくありません。

哲学者アンリ・ベルクソンはエランヴィタール(=生命の躍動)
という概念を提唱していますが、まさに、命や心の躍動が
奪われてしまうと、生きる意味を見いだせなくなってしまいます。

幸い、この患者さんは夫婦カウンセリングの場で、
妻に死ぬ前に(死んでもいいから)コンビニのおでんが食べたい!と訴え、
妻もそこまで辛い思いをしていたとは思わなかったと折れました。

Aさんも、自分は患者でケアされる側(=弱者)であり、
仕事もしていないから、一生懸命看病してくれている妻に対して
文句は言えず、我慢していたことを告白しました。

このカウンセリングの帰り道、二人はコンビニに寄ったそうです。

そして次のカウンセリング、Aさんは満面の笑みで、そして張りのある声で、
「コンビニのおでん食べました!最高でした!」と報告をしてくれました。

エランヴィタール…彼には、困難を乗り越えて前進しようとする
エネルギーがみなぎっていました。

私たちは、その対象が何か、ということにはよく注意を払いますが、
それら対象と、どう関わるかという、関係性の健全性には
なかなか注意が向きません。

医療現場もしかり。
患者さんにデータの内容を伝えることは、いうまでもなく重要ですが、
目を見て「乗り越えられるようにがんばりましょう」と
穏やかに励ましてくれるそんな一言ある関わりがあったなら、
医療者と患者との治療関係そのものが
生命の躍動の源にもなりえるのではないでしょうか。

患者としてではありませんが、
私は幸い、そんな精神腫瘍医に出会うことができました。

一人は20代のとき、私のメンターであるカール・サイモントン博士、
そして二人目は30代のとき、
聖路加国際病院精神腫瘍科でお世話になった、保坂隆先生です。

病気に何が効くかだけではなく、
常に患者さんにとって何が良いかに目を向け、
心を開いているこのドクターたちに共通しているのは、
底知れぬ好奇心と洞察力と愛、そして、悪意のないユーモア。

関係性の医療として、先生のスーパビジョンのもと行われる
グループ療法では、ラウンドテーブルを囲む患者さんたちは、
泣いたり笑ったり、互いに支え合いながら、
それぞれにたくましく癒しの道を歩み始めます。

エランヴィタールが集うグループ場のちからです。
ソーシャルサポートは抗がん剤に勝るとも劣らない治療だと実感します。

ソーシャルディスタンスが叫ばれる昨今、
カウンセリングやグループ療法がなかなか思うように進行できませんが、
こんなときだからこそ目に見えないつながり、ソーシャルサポートの
ちからをいかに発揮するか、私たちの智恵が試されるのだとも思います。

年末年始、帰省を控え、家族と共に過ごす時間を
犠牲にされていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

実際に対面で会えなくても、オンラインで画面越しに顔を合わせたなら、
私たちの心は時空を超え、一瞬にしてつながることができます。

これもまた人類の授かった叡智なのでしょう。
ぜひ、そんな智恵を活用して
穏やかに温かな時間を過ごす工夫をされますように。

保坂隆先生とがん患者さんご家族のスペシャルZoomセッション開催
https://in.personalhealth.jp/WAOH210122_L_2000_DAN
 

★人生の核となる信念との関係性を整え穏やかに生きる〜
「サイモントン療法オンラインプログラム」開催のお知らせ
 川畑のぶこ(進行)
 一般・インターン向け:https://simonton-ip-2021-01.peatix.com
 がん患者さん・サポーター向け:https://simonton-pt-2021-01.peatix.com

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